お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

騙し取られたお金はまず戻ってこない

物語の世界では、たとえ善良な被害者が詐欺的行為に遭っても、ヒーロー役の誰かが悪役をやっつけ、奪われたお金も戻ってきてハッピーエンド、という流れになるのが王道ですが、現実の詐欺事件はそれほど都合のいい展開にはなりません。

私が被害に遭った詐欺事件の担当となった、千葉県警の担当刑事の話によれば、こうした詐欺によって取られたお金は、まず戻ってくることはないということです。その担当刑事は当時、知能犯捜査係に所属していて、こうした詐欺事件を担当していたということですから、まず間違いのない事実だと思います。

理由はとても単純で、詐欺師たちは騙し取ったお金をほとんど遊興費で使い切ってしまうものだからです。

よくよく考えれば、彼らはじつに美味しい「儲けのタネ」を手にした状態です。金がなくなったら、また別の誰かを同じ手口で騙せばいい――そんなふうに考える奴らが、奪った金を律儀に貯金したり、隠し持っていたりしているとは考えにくいでしょう。

警察がやってくれるのは、犯人を逮捕し、犯罪者として確実に刑を確定するところまで。騙し取られた金の弁済については、介入することができないというのが原則です。これを「民事不介入」と言いますが、詐欺によって騙し取られたお金の権利については、刑事事件の範疇ではない、という解釈によるものです。

被害者から奪われた金の弁済を要求するには、民事裁判を起こさなければならないのですが、先にも書いたとおり、たとえ裁判を起こして勝訴に持ち込んだとしても、そもそも弁済するためのお金がない状態です。

いくら法の力をもってしても、「ない袖は触れない」ということです。そのことを知ったときは、なんと理不尽なことだろうと腹立たしく思ったものです。これでは、詐欺を仕掛けたほうがよっぽどお得じゃないかと。

そして、たとえ今は刑務所行きになってはいるが、いずれ刑期が上がれば社会に出てきて、また同じようなことをくり返すのでしょう。それもまた腹立たしいことですが、どうしようもありません。

このように、一度でも詐欺の被害に遭うことで失われる代償は、想像以上に大きなものとなります。だからこそ、詐欺の被害を未然に防ぐことが大切になってきます。