お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

「断る力」に大いに学べ

勝間和代氏の『断る力』という本があります。

これは、他人や組織に無理やり自分を合わせようとするのをやめ、意にそまない仕事や頼まれ事についてはきっぱりと「断る」ことを推奨する本ですが、たんに嫌なことをはねつければいい、ということではありません。

「断る力」の根本にあるのは、「人の言いなりになってはいけない」という精神です。人から何かを頼まれる。それをこなすと喜ばれる。それはたしかに大切なことなのですが、それは同時に、自分の人生を行き当たりばったりにすることであり、自分の生き方を他人に委ねることにもなってしまう、という警告があるのです。

最初にこの本を読んだとき、私は「断る力」とは、人生の限られた時間を自分のためにこそ使うべきだ、というメッセージを読みとりました。ですが、何度か読み返してみてあらためて感じるのは、それ以上に著者は、「断る力」が他人や組織のため、しいては社会全体をより良くするためのものだという確信をもっている、ということでした。

なぜなら、何かを断るためには、その「何か」が本当に自分の人生の糧となるのかどうかを見極めなければならず、そのためには自分がどんな目標をもち、そのために何を成すべきなのかがわかっていなければならないからです。

また、自分が好きなものが何なのか、嫌いなものが何なのか、得意なこと、苦手なことが何なのかといったことをきちんと把握していなければ、舞い込んでくる頼まれ事や仕事について、自分向きのものであるかどうかの判断をすることもできません。

自分の資質と合わない仕事を続けても、それは自分のためにもならず、また相手のためにもなりません。だから「断る力」とは、ただたんに要求をはねつけるのではなく、相手のためにより良い提案を出すための最大限の努力をすることである、とこの本では説いています。

このことを、著者は「思考のクセ(習慣)」と呼んでいます。

相手が出してきた要求や条件に対して、何も考えないままに従うのではなく、もっと良い方法、うまいやり方があるのではないか、と一歩踏み込んで考えるクセをつけること――これは、私がこれまでこのブログで何度も取り上げてきた、「ノット・ファースト・コミットメント」という詐欺対策につながるものです。

sagi-zero.hatenablog.com

「ノット・ファースト・コミットメント」は、相手からの最初のアプローチに対して、けっしてその場で「コミットメント」を与えないこと、最悪でも、金銭がらみの話になったときには、絶対にその場での了承を拒否する姿勢を貫くことで、詐欺や悪徳商法の被害から身を守るというものです。そして、そのために必要なこととして、「懐疑主義」であり続けることを提唱してきました。

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「断る力」もまた、詐欺や悪徳商法対策としては、うってつけの姿勢だと言えます。相手の要求に対して、いったん距離を置いて考えるクセをつけることは、詐欺師や悪徳業者の巧みな影響力から離れ、自分を客観的に見直す冷静さを培うことにつながります。またこの姿勢は、ふだん接している人たちに対しても、より良い提案をするきっかけとなる、という意味で有益なものです。

どんなときも主体的に生きるための「断る力」は、まさに詐欺や悪徳商法の被害者となることを「断る力」なのです。