お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

詐欺師や悪徳業者は「メフィラス星人」である

「ノット・ファースト・コミットメント」という詐欺対策法の利点は、詐欺や悪徳商法の手口の最初の一手を潰すことができるところにあります。

というよりも、この「最初の一手」を防げるかどうか、最悪でも「金銭絡み」の要求を拒否できるかどうかが、被害を未然に防ぐための最重要点だと言えます。これまでも何度かくり返してきましたが、詐欺や悪徳商法の被害は、時間が経てば経つほど大きくなり、またそれだけやめるのにも大きなエネルギーを必要とします。

詐欺や悪徳商法にはじつにさまざまな種類がありますが、そのいずれも、「最初の一手」として用いる手段はごく軽いアプローチであることが大半です。これはある意味で、相手からの「ファースト・コミットメント」を引き出すための手口でもあるのですが、逆に言えば、ここさえ死守すれば、相手は暴力にでも訴えないかぎりはどうすることもできません。

「ファースト・コミットメント」は絶対に相手に与えない、そのために、一度距離を置いたり、考える時間を作ったりできるように努力する――場合によっては、それだけでも大変なことかもしれませんが、詐欺被害の泥沼のことを考えれば、ここが最初で最後の踏ん張りどころでもあります。

このあたりは、物理学の「慣性の法則」に似たところがあります。止まっている物体を動かすには、最初は大きな力が必要ですが、一度動き出してしまえば、小さな力でも動き続けていきます。逆に、いったん動き出した物体を止めるには、また大きな力を必要とします。

だから、まずは止まっている「詐欺被害」という名の物体を、先に進ませないようにするのが肝心です。そしてそれを実現するのが、「ノット・ファースト・コミットメント」という詐欺対策法なのです。

それでも、詐欺師や悪徳業者は人を騙すプロであり、私たちにとっては大きな脅威であることに変わりはありません。

ですが、だからといって彼らを必要以上に怖がる必要はありません。なぜなら、彼らがもっとも欲しがっているのは相手からの「コミットメント」であり、それがなければまず違法な手出しはできないとわかっているからです。口ではどのように言ったところで、警察沙汰になるようなことは、彼らのもっとも好まない展開のはずです。

特撮テレビ番組「ウルトラマン」に登場した敵の中に、「メフィラス星人」という名の宇宙人がいます。「悪質宇宙人」という異名をもつこの敵は、それまでの怪獣や宇宙人とは異なり、いきなり街を破壊するといったことはせず、ある少年を円盤に誘拐し、少年に対して「地球をあげます」という言葉を引き出そうとします。

これはまさに、地球侵略のための「コミットメント」を地球人の口から引き出すためのもので、詐欺師や悪徳業者の使う手口とよく似ています。

このメフィラス星人は、ウルトラマンと互角に戦えるほどの強敵だったのですが、そんなメフィラス星人も、少年のコミットメントを得られなければ、地球に対して実質的な攻撃をできないルールに縛られた存在でした。

詐欺師や悪徳業者は、この「メフィラス星人」と同じです。強敵ではありますが、こちらから「ファースト・コミットメント」を与えないかぎりは、実質的な詐欺被害を及ぼすことができない存在なのです。