お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

お金に関して懐疑主義たれ

「ファースト・コミットメントを与えない」こと、とくに狭義の「ファースト・コミットメント」について、ここが絶対防衛ラインだという意識をもちつづけることが、唯一にして究極の詐欺対策だと書きました。では、そのために具体的に何を心がければいいのか、という疑問が当然出てきます。

結論から先に言えば、ことお金に関して懐疑主義を貫くことです。

私たちは貨幣経済の社会を生きています。ですが、物質としての硬貨や紙幣というものは、そもそも国の信用によって成り立っている「約束事」にすぎません。国がその価値を保証しなければ、硬貨や紙幣はただの金属片であり、ただの紙切れにすぎないものです。

ですが同時に、こうした「約束事」がしっかりと守られているがゆえに、お金というものはあらゆるモノやサービスと交換することができ、それが私たちの日常において、さまざまな手間ひまを省いてくれていることもたしかです。今更貨幣制度をなくし、すべてを物々交換でまかなうというのは、もはや現実的ではありません。

つまり貨幣の有無は、賛否両論はあれど、今の社会においてはそのまま「豊かさ」の指標とつながっていることは間違いありません。少なくとも貨幣経済が成り立っているかぎりはそうです。そして、詐欺師や悪徳業者たちは、その「豊かさ」を不当な手段で奪い取ろうとしているのです。

「お金がすべて」などという貧しい考え方をしろ、とは言いません。ですが、お金というものが、良い意味であなたの「豊かさ」を守るためのものだという意識を、けっして忘れないようにしてください。そしてそのためにも、あらゆる金銭交換の場において、本当にこの「モノ」や「サービス」が、支払うべき金額に見合うものなのか、という懐疑心を、常に心のどこかで持っていてほしいと思います。

あなたの稼いだお金は、間違いなくあなた自身のものです。ですが、そのお金が「あなた自身のもの」だと常に訴えていくという姿勢を忘れてしまうと、知らないうちにその権利を奪い取られることになりかねません。お金を支払うという行為に対して、まずは疑ってかかるという手法を適用することで、狭義の「ファースト・コミットメント」を与えることに対して、常に一歩引いて考えるだけの余裕を生み出すことができるはずです。

逆に、不当に安い値段や、タダという言葉、あるいはお金をくれるといった、自分がお金を受け取る側になるさいにも、同じように懐疑主義を貫いてください。世のなかにうまい話などない、という真理は、「豊かさ」が天から降ってくるわけではないということと同義です。それは私たちが日々稼ぐことで、少しずつ勝ち取っていくたぐいのものだということを忘れないでください。

懐疑主義」などと書くと、いかにも意固地で皮肉屋めいたイメージがありますが、懐疑主義協会理事を務めるマイクル・シャーマー氏の書いた『なぜ人はニセ科学を信じるのか』という本のなかに、懐疑主義の本質を示す言葉があります。

懐疑主義とは、さまざまな主張に対する、暫定的なアプローチのひとつでしかない。懐疑主義とは手法であって、見解ではないのである。(『なぜ人はニセ科学を信じるのか』より)

 

お金に関して懐疑主義たれ――それが、いつしかあなたを詐欺や悪徳商法から身を守ること、「ファースト・コミットメント」を死守する姿勢へとつながっていきます。