お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

アポイントメントセールス

おもに20歳台の若い男女をターゲットとすることが多い「アポイントメントセールス」とは、その名称どおり、何らかのアポイントメント、つまり相手から「会う約束」を取りつけるところからはじまる悪徳商法のひとつです。

最初のアプローチとしては、ハガキやFAXといった手段もありますが、圧倒的に多いのが電話によるアプローチです。そしてその内容は、大きく二つに分類することができます。ひとつは、高額な景品の当選通知や特別価格での販売といった、いかにも相手にとってお得な情報を提示してくる「有利条件告知型」。もうひとつは、アンケート依頼やキャンペーン告知、展示会への招待など、販売目的であることを直接明かさずに相手を呼び出す「販売目的隠蔽型」です。

とくに後者の場合、ターゲットが男性であれば女性を、女性であれば男性の販売員が相手となる場合が非常に多く、電話口で会話をしていくうちに親しい雰囲気をつくっておいて、相手からのコミットメント、つまり「呼び出し」に応じさせようとしてきます。誰でも、若い異性と親しくなれば悪い気はしませんし、できればそうした相手には嫌われたくない、という心理がはたらくものですが、そうした相手の好意を巧みに利用するのが、アポイントメントセールスの常套手段となっています。

それゆえに、販売目的であることを長期間隠したまま、何度もターゲットと接触し、あたかも恋人であるかのような雰囲気を味わわせる「デート商法」も、このアポイントメントセールスの亜種として分類されます。

また最近では、SNSや各種コミュニティーサイトなど、インターネットの交流場所での出会いを最初のアプローチとして利用するという手口も多くなってきています。

異性に対して好かれたい、嫌われたくないという気持ちを利用するアポイントメントセールスは、それゆえに「ノット・ファースト・コミットメント」による詐欺防止を徹底する者にとって、最大の障壁として立ちはだかってくる悪徳商法でもあります。

「有利条件告知型」にしろ、「販売目的隠蔽型」にしろ、彼らの最終目的は、安価な商品やサービスを異常な値段で購入させることです。ある程度相手との距離が縮まったところを見計らって、展示場や営業所などに相手を連れ込み、そこで販売されている高額な商品を買わせようとしてきます。

本来であれば、この時点で狭義の「ノット・ファースト・コミットメント」の徹底、つまり金銭絡みのコミットメントを断固拒否すべきなのですが、アポイントメントセールスの手口としては、この時点でほぼ達成されたような状態となっています。つまりこの時点で、ターゲットは何度も小さな「コミットメント」を与えてしまっているわけです。そのうえ販売員に好意を抱いてしまっていれば、さらに拒否しづらい状況です。

悪徳商法側も、誘った本人だけでなく、その上司なども使って、「断ったら彼女(彼)がきっと悲しむ」などと、相手の罪悪感を掻き立てたりするなど、執拗に購入や契約を求めてきます。

できることなら、そうした事態に陥らないようにする、つまり、相手からの最初の一手を潰す広義の「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底するようにしてください。そのためには、身に覚えのない懸賞の当選など、いかにもおいしい話については、必ず何か裏があるという懐疑主義で臨むべきです。しつこくアプローチを求めてきても、毅然とした態度で拒否しつづけてください。

また、異性からの突然の連絡にも注意してください。アポイントメントセールスは、マルチ商法と同様、かつての友人や同じ会社の同僚など、知り合いからのアプローチを受ける事例も確認されており、つい気を許してしまいそうになるのですが、金銭がらみのこと同様、異性からの好意的なアプローチにも、「そんなうまい話はまずありえない」という前提を崩すべきではありません。そうした心がけをするかどうかで、悪徳商法の被害から身を守ることができるかどうかが大きく変わってくるはずです。