お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

催眠商法(SF商法)

昔観たテレビドラマで、この「催眠商法」のシーンがあったことを覚えています。もっとも、どこの放送局であるとか、どんなタイトルのドラマだったのか、主演俳優が誰だったのかはすっかり忘れてしまっているのですが、どこかの特設会場に近所の主婦や高齢者を集め、販売員が巧みに場を盛り上げていくことで、会場全体が異様な熱気に包まれていく過程が、まるで非現実的な出来事のようで(まあ、ドラマなのですが)、そのイメージだけが妙に印象に残っています。

私がそのドラマを観たのは、おそらく二十代の頃なのですが、「催眠商法」は昔からよくある悪徳商法のひとつです。一時期被害が拡大し、規制されたりして沈静化するのですが、また忘れたことに似たような手口で復活する、というサイクルがくり返されているようです。

上述したように、催眠商法は大勢のターゲットを閉鎖された会場などに誘い込み、場を盛り上げて冷静な判断をできなくしたうえで、高額な商品を売りつけるという手の込んだ手法を使います。

ちなみに、記事タイトルには括弧書きで「SF商法」と記してありますが、これは催眠商法を最初に行なった業者と言われている「新製品普及会」の略称です。また、会場内で販売員が「商品が欲しいときは『ハイ!』と言ってください」とルールを説明し、会場全体が「ハイ!」の大合唱になるところから、「ハイハイ商法」と呼ばれることもあります。

催眠商法ではまず、誘い込みのための会場が必要なのですが、大抵はすぐに撤収できるような仮設店舗であることが多く、場所も駐車場や空き店舗、貸し会議室などの施設、マンションの一室など、一時的に借りられるような所を利用します。

次に、ターゲットとなる人たちを大勢連れてこなければいけないのですが、方法としては、販売員が近所を回って「激安販売会がある」と直接呼び込んだり、くじ引きなどで景品を無料で配ったうえで会場に引き込んだり、「無料プレゼント交換券」や「試供品引換券」などをつけたパンフレットやチラシを近所のポストに投函したりといったものがあります。

また、おもに主婦層のクチコミによって広がっていくことも非常に多く、「タダで日用品がもらえる」などと、近所の住人から誘われるケースもよくあります。

商品販売(あるいはプレゼント交換)がはじまると、話術の巧みな販売員がとにかく場を盛り上げていきながら、やがて競売のような商品販売へと移行していきます。最初はちょっとした日用品がたしかに格安の値段で販売されるのですが、たいていは数に限りがあり、早い者勝ちというルールでとにかく「ハイ!」と手を挙げさせるよう、客たちを誘導していきます。

そうした販売方法を何度か繰り返していくうちに、会場の閉鎖性もあって、集められた人たちは次第に冷静な判断ができないような心理にさせられてしまうのです。そして、そうした時期を見計らったうえで、いきなり高額な商品を提示するのですが、客たちはこれまでのパターンでついつい「ハイ」と手を挙げてしまうことになります。

もちろん、こうした悪徳商法では、最初のアプローチから「無料」や「格安」といった金銭がらみの怪しいキーワードが出てくるので、その時点で「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底することが鉄則なのですが、悪徳業者からの最初のアプローチが「対人」であることが多く、なかなか無視することが難しいという現状があります。

ですが、キャッチセールスやマルチ商法と同じく、一度そうした会場に連れていかれると、そこから何も買わずに抜け出すことが難しくなります。とくに、時間が経つにつれて会場は一種の興奮状態になるため、何らかの理由をつけて、できるだけ速やかに立ち去る必要があります。

もし、他の誰かからそうした会場に行こうと誘われても、絶対に断るべきです。あくまで「ノット・ファースト・コミットメント」を貫き、むしろ懐疑主義を発揮して、「じつは悪徳商法なのでは」と警告できるようになれれば、被害の拡大を防ぐことにもなります。