お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

「コミットメント」の重み

「コミットメント」という言葉を調べると、「責任を持った約束や確約」、「委任・委託すること」、「関わり合い、介入」といった意味が出てきますが、ここでいう「コミットメント」とは、何かをやろうとするさいに、そのやろうとする事柄を宣言することを指します。

結婚式における披露宴は、その名の通り、周囲の人たちや新郎新婦の関係者への「お披露目」のための宴ですが、同時に新郎新婦によるコミットメントを意識させるための儀式にもなっています。

「私たち、結婚しました」と周囲に「宣言」することで、結婚すること、家族になることへの「責任」をよりいっそう感じることになるのです。

この「宣言」には、当人が思っている以上の重みがあります。

ダイエットにしろ禁煙にしろ、誰かに「やれ」と言われてやるのと、自分で「やる」と宣言してやるのとでは、当然のことながらその意欲が違います。

これは前回のエントリーでも取り上げた「一貫性原理」にも関係してくることですが、人は一度何かを決意したり、ある立場を取ったりすると、その決意や立場をできるだけ保とうとする心理がはたらきます。これは「自分が決めたこと」という意識が高ければ高いほど、より強く影響することになります。

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そして、詐欺行為をはたらこうとする人たちにとって、この相手からの「コミットメント」は、何を差し置いても手に入れたいものです。

相手からの「コミットメント」を引き出すための手法は、じつは商売の世界でも数多く使われています。

たとえば、スーパーなどでよく見かける料理の試食コーナーは、お客に無料の試食料理を食べてもらうことで「コミットメント」を得るための装置です。ただたんに商品を売るより、試食品を食べた人に商品を勧めたほうが、購入してもらえる確率が上がるからこそ、この手法が使われるのですが、そこには試食品を食べたというお客の「コミットメント」に訴えるという狙いがあります。

ネット上には「まずは無料会員登録!」とか、「無料サンプル配布!」とか、「まずは資料請求を!」といった広告がやたらと目に付きますが、これも相手の「コミットメント」を得るための手法のひとつです。私も経験のあることですが、無料だからといって、安易にこの手の広告に申し込んだりすると、次からは有料の商品を売りつけようとする業者からの猛アタックがかかってくることがじつに多いです。そして私はというと、無料のサンプルや資料を手に入れてしまったという「コミットメント」が、負い目になってしまうというわけです。

この「コミットメント」の形は、最初はごくささいなことや、小さなことだったりします。相手としては、最初の了承さえ受けてしまえば、あとは段階的にコミットメントを強めていくことで、より高価な買い物をさせるように誘導することが期待できるのですから、それで充分なのです。

そして逆に言えば、詐欺や悪徳商法から身を守るためには、この「コミットメント」をいかに相手に与えないようにするのかが重要になってくる、ということになります。