お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

架空請求詐欺

振り込め詐欺」の四つの型の三番目として、「架空請求詐欺」があります。電話やハガキ、電子メールなどで、身に覚えのない架空の債権の弁済を要求するという手口の詐欺で、具体的には「出会い系サイトの利用料」や「有料アダルトサイトの登録料」などのアダルト系、楽曲やアプリケーションのダウンロード料などのダウンロード系、債権回収機構や信用調査会社からの催促といった催促系など、いくつかの種類がありますが、いずれにしろ、何らかの利用料が未納だと言ってくるものがほとんどです。

警視庁ホームページによる「架空請求詐欺」の被害状況は、平成26年で3,180件、被害額は約175億8,141万円と、その前の年と比べて被害が倍近くになっており、そういう意味で特に警戒する必要がある詐欺です。

架空請求の文面は、ハガキにしろ電子メールにしろ、受けとった相手を脅迫し、心理的に追い込むような内容であるものがほとんどです。どのような内容なのかについては、「ネットの安全利用ガイド」の以下のページで文例を見ることができます。

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「自宅まで取りに行く」「裁判訴訟による差し押さえ」「最終通知」「法的処理」「ブラックリストへの掲載」等々、じつにおどろおどろしい文句が並んでいることが、架空請求詐欺の文面の特徴ですが、これらはすべて、相手から連絡させるための手段です。そうすることで相手の個人情報を言葉巧みに盗み出し、さらなる「コミットメント」を引き出すための材料とするのが目的です。

じつはこの架空請求詐欺は、詐欺師からの最初のアプローチが非常に明確なパターンです。しかもこの手の詐欺の基本は、相手からの連絡を待つ形になることがほとんどです(まれに、直接電話がかかってくることもありますが、それによって相手の次のアプローチを待つ形になるという意味では同じです)。

言い換えれば、広義の「ファースト・コミットメント」を与えるかどうかについて、被害者側の能動的な行動に大きくゆだねられているところがある、というのが「架空請求詐欺」の特徴であり、また弱点でもあります。

であれば、こちらとしてやるべきことは、「ノット・ファースト・コミットメント」という詐欺対策に従って、無視を決め込むことです。絶対に相手にしてはいけません。仮に、請求金額が少額のものであったとしても、「いろいろ面倒なことになりそうだから」と連絡すべきではありません。上述したように、相手はあなたの個人情報を聞き出し、さらなる「コミットメント」を要求することで、さらなる金額を騙し取ろうとしてくる可能性があります。

さらに、一度支払ってしまうと、その情報が詐欺仲間で「カモ」リストとして回ってしまうこともあります。そうなると、たとえ少額とはいえ、何度も何らかの理由をつけて請求されることになりかねません。

架空請求詐欺については、「何もしない」という大原則を貫くようにしてください。

ただし、ひとつだけ例外があります。

それは、裁判所からの「特別送達」が届いた場合です。

これは、ポストに投函されるのではなく、郵便局職員からかならず手渡しで受け取る形のもので、少額訴訟制度や支払催促制度という、れっきとした法制度に則ったものです。身に覚えのない請求だからといって、無視を決め込んでしまうと、相手側(ようするに詐欺師)の主張(つまり金をよこせ)を認めたものと見なされてしまい、結果としてあなたに不利益をもたらす場合が大きいです。

これは、法制度を悪用した非常に悪質な詐欺行為で、これについてだけは、「ノット・ファースト・コミットメント」という詐欺対策が有効になりません。裁判所からの「特別送達」を受け取った場合、それが身に覚えのない請求なら、受け取りから二週間以内に裁判所に対して「督促意義の申立て」を行なう必要があります。

このケースに関しては、受け取ったものが本物の少額訴訟、支払催促かわからない場合ももふくめ、すぐにでも消費生活センターか裁判所に連絡し、確認するようにしてください。