お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

マルチ商法(仕組み編)

悪徳商法のなかでも、マルチ商法ほど失うものが大きいものはない、と個人的には思っています。かつて私は刑事事件にまで発展した詐欺の被害者となり、1,000万近い現金のほかに消費者金融の借金を背負わされる羽目に陥りましたが、それでもまだ助けてくれる人がいました。マルチ商法に手を出した場合、それに加えて今まで築き上げてきた人間関係さえも無くしてしまい、たったひとりで途方に暮れることになりかねないからです。

マルチ商法」は、悪徳商法のなかでもとくにその仕組みが複雑なうえに、じつは本当に違法ではなかったりと、その実態がはっきりしないという印象があります。

そこで、マルチ商法から身を守る方法に入る前に、まずはマルチ商法とは何かを簡潔に説明してみますが、そのためには「ねずみ講」のことを知っておく必要があります。

たとえば、ある組織があるとします。一種の組合のようなものだと考えてください。その組織に入会するためには、組織の人の紹介が必要で、そのさいにある程度のお金を入会金としてその人に支払うものとします。

それだけだと、ただお金が減っただけなのですが、その代わり、自分が会員としてさらに別の人を組織に入会させると、その人が組織に入るために支払ったお金の何割かを「配当金」として自分のものにできる、ということにします。

残りのお金はどうなるかと言えば、自分をその組織に紹介してくれた会員のものになります。そしてその会員もまた、さらに自分を紹介した会員に配当金の残りを渡していき……というふうに、お金が下から上へと吸い上げられるような仕組みができあがることになります。

原理的には、多くの人を入会させれば、それだけ自分の手元にもお金が入ってくることになるのですが、この仕組みでもっとも儲けることができるのは、ピラミッドの頂点にいる人、つまり組織の創立者です。組織の会員がねずみ算的に拡大し、それにともなって上の階層の会員が手にする金額もねずみ算的に増えていくことになります。

逆に言うなら、この仕組みで本当に得をするのは、ごく少数の「上の階層の会員」のみです。こうしたシステムのことを「無限連鎖講」と呼びますが、「ねずみ講」はこの「無限連鎖講」に該当します。

そしてこの「無限連鎖講」は、法律で禁止されています。ですから、「ねずみ講」は犯罪行為であり、発覚すれば法律違反として刑事罰に処されることになります。

では「マルチ商法」とは何かというと、じつはやっていることは「ねずみ講」とまったく同じだったりします。ただし、組織に入るのに必要なのが「入会金」ではなく、「商品を購入すること」に変わっただけのことです。そして紹介者は、売れた商品の代金の何割かを自分の利益にすることができる、というわけです。

たったそれだけの違いなのですが、金銭のみの受け渡しではないがゆえに、マルチ商法は法律上は「合法」ということになってしまっています。まさに法律を逆手にとったやり口だと言えます。ですが、「商品販売が目的なのだから、ねずみ講ではない」というのは、じつは事実なのです。

ただし、商品販売をまともにやっていて儲かるかといえば、けっしてそんなことはありません。マルチ商法にとって「商品販売」はただの名目にすぎないからです。マルチ商法で扱う商品は、健康食品や化粧品、医薬品、日用品とさまざまですが、いずれも値段が法外なものばかりで、まず買ってくれそうな人はいません。

けっきょく、会員となった人は、手にした商品を販売するよりは、ひとりでも多くの会員を増やすことに奔走することになります。私がマルチ商法に対して、「ねずみ講とまったく同じ」と書いたのは、そうした理由ゆえのことです。

さて、これで本来の「対策編」に入ることができます。

sagi-zero.hatenablog.com