お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

ファースト・アプローチのタイプ別詐欺対策

はじめに

前回のエントリーでは、詐欺や悪徳商法の事例は大きく3種類に分類できるということを書きました。

sagi-zero.hatenablog.com

では次に、この3パターンの詐欺に対して、どのように「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底すべきなのかを解説していきます。

「能動型」かつ「直接型」

ファースト・アプローチとしての「能動型」かつ「直接型」詐欺は、要するに詐欺師や業者が直接ターゲットのところに訪問してきたり、あるいは街頭で直接声をかけてきたりする、ということを意味します。

具体的には「キャッチセールス」「マルチ商法」「点検商法」「催眠商法」の4種類が該当しますが、いずれも最初の一手が対人であるだけに、まともに相手をすればするほどその話術に翻弄され、その結果、小さな「コミットメント」を少しずつ相手に与えてしまうことになりかねません。

さらにやっかいなのは、いざ向こうが高額な商品の購入や契約を勧めてきたときには、すでに逃げ場がないという状況に追い込まれている可能性が非常に高い、ということです。それだけ「直接型」による詐欺行為は、周到に計画されたプロットに基づいて実行されるということでもあります。

人から呼び止められるような場合、あるいはアポイントもなく訪問してくるような場合は、まず詐欺であることを疑い、警戒を怠らないようにすることが肝心です。できることなら、まったく興味がないようにふるまって、できるだけ速やかに対話を終わらせるようにする、というのが「ノット・ファースト・コミットメント」を貫くための方法論となります。

仮に、その内容が以前から気になっていたものであったとしても、少なくとも彼らに対してそんなそぶりを見せてはいけません。彼らに頼ろうとするくらいなら、まず自分から情報収集をしたうえで、自ら信用できそうな業者にアプローチをかける、という心構えをふだんから志すべきです。

もちろん、最終手段として110番通報することも検討に入れておいてください。

「能動型」かつ「間接型」

ファースト・アプローチとしての「能動型」かつ「間接型」詐欺は、おもに電話による接触を積極的を仕掛けてくる、ということを意味します。

具体的には「オレオレ詐欺」「還付金詐欺」「利殖詐欺」「送り付け商法」「資格商法」の5種類が該当します。「送り付け商法」については、じつは「受動型」アプローチタイプとしての要素もあるのですが、代金引換制度の悪用のことを考えると、「能動型」としての対策のほうが有効であると判断し、こちらに分類しています。

あくまで電話という間接的なアプローチが主なため、こちらとしても、とりあえず電話を切る(「送り付け商法」なら受け取り拒否)という強攻策をとることで、冷静になる時間を確保することが可能であり、そのぶん心理的にも余裕があるのですが、「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」の事例でもわかるように、相手は過剰な演出や脅迫、恫喝、あるいは極端な二者択一など、あらゆる話術、交渉術を駆使して電話を長引かせ、こちらの心を動揺させようとしてきます。

もちろん、そうすることで相手からとにかく「コミットメント」を引き出そうとするのが、彼らの手口であり、最終目的である「金を騙し取る」ための確実なステップであることは、言うまでもありません。

まずは、自分が詐欺や悪徳商法の相手と直接対峙しているわけではなく、あくまで電話越しでの(あるいは第三者を介しての)応対をしているにすぎないという現実を思い出しましょう。電話の向こう側がどれだけ劇的であっても、あるいはどれだけ脅しをかけてきたとしても、「今この現状」において、自分がどうにかされるわけではありません。

また、人間の言動は意外と自動的で紋切り型であり、反射的な言動をくり返して日常生活を維持していますが、冷静になる時間さえ与えられれば、重大な問題についてちゃんと頭で思考するようにもできています。「間接型」のアプローチは、その「冷静になる時間」を比較的得やすいのです。

そうなってしまえば、あとは落ち着いて「ノット・ファースト・コミットメント」を貫けばいいだけです。

「受動型」かつ「間接型」

ファースト・アプローチとしての「受動型」かつ「間接型」詐欺は、基本は完全にターゲットからのアプローチを待つというタイプです。電子メールやDM、チラシ、インターネット広告などなど、方法こそ多彩ですが、大きく網を張って獲物が引っかかるのをひたすら待ち構えるという意味では、すべてひとくくりにすることができます。

具体的には、「架空請求詐欺」「融資保証金詐欺」「ワンクリック詐欺」「フィッシング詐欺」「アポイントメントセールス」「サイドビジネス商法」の6種類が該当しますが、いずれにしても、こちら側からアプローチをかけないかぎり、向こうからは手の出しようがない、という点では、もっとも対策のとりやすい詐欺だとも言えます。

もちろん、そんなことは詐欺師や悪徳業者は百も承知です。ですから、たとえば「金払え」系であれば、いかにもターゲットが連絡をせずにはいられない文面を練ってきますし、「儲かります」系であれば、その手の内容に少しでも興味をもつターゲットの心理を揺さぶるような宣伝文句で煽ってくることになります。

「ノット・ファースト・コミットメント」の徹底という意味では、とにかくそうした誘いには、一部の例外を除いて「無視する」というのが最善手となるのですが、彼らの手口というのは、たとえば100人に対してたった1人が引っかかればそれでいい、というスタイルなので、仮にそうとは知らずにこちらから連絡をとってしまい、そこから詐欺や悪徳商法であると気づいたとしても、なかなかそこから抜け出すのが難しくなるという特徴もあります。

それゆえに、最初の一手を拒否するという広義の「ノット・ファースト・コミットメント」だけでなく、狭義の「ノット・ファースト・コミットメント」、つまり金銭がらみのコミットメントについて、絶対にその場では与えないという姿勢が重要なのは、この手の詐欺でも同様です。そしてそのために、モノやサービスを買うさいに、本当にそれらが自分の持つお金を支払うに値するものかどうかをひとまずは疑うという、懐疑主義を貫く姿勢をふだんから磨いておくことも忘れないようにしてください。