お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

「ノット・ファースト・コミットメント」という対応法

「コミットメント」については、それ専用のエントリーを用意してありますので、未読の方はまずそちらを読んでみてください。

sagi-zero.hatenablog.com

くり返しになりますが、この「コミットメント」、自分から「やる」「了解した」「わかりました」といった宣言をする行為は、当人が思っている以上に大きな拘束力をもつものであり、それゆえに詐欺師や悪徳業者たちは、何よりもこの「コミットメント」を相手から引き出すことを第一目的としているところがあります。

逆に言えば、詐欺や悪徳商法のさまざまな手口は、この「コミットメント」を引き出すためのものが大半を占めています。

「ノット・ファースト・コミットメント」とは、そうした了承の言葉をけっしてその場で口にしない、ということです。

ここで重要なのは、「その場で」という部分です。べつに、なんでもかんでも、あるいは誰に対しても「コミットメント」を与えるな、ということではありません。とりあえず、安易に了承の言葉を相手に与えるのは避け、いったん冷静になるだけの時間を自分に与えることを考える、それが「ノット・ファースト・コミットメント」の基本です。

それができて、はじめて「まずは冷静になること」や「自分から確認をとること」といった一般的対策が可能になり、また「情報収集をする」といった日頃の行為が生きてきます。

私がこの対応法の有効性を真剣に考えるようになった、ある悪徳商法のエピソードがあります。

以前、私のところにやってきた不動産関係の業者といろいろ面倒なことになりかけたことがあるのですが、この手の悪徳業者は、賃貸住まいの私のような者をターゲットに、「このままずっと賃貸でいつづける気ですか」などと将来の不安を煽り、最終的にはマンションなどの物件購入を契約させるという手法をよく使っていました。

私のところに来た業者も、そうした方向に話を持っていき始めたため、これは「絶対承諾してはいけないヤツだ」と思い、「とにかく不動産関係については考える気はないから、今日はこのまま帰ってくれ」と言いつづけました。

もちろん、相手はおとなしく引き下がりません。なんとしても次のアポイントを取ろうと必死で、それが得られなければ絶対に帰らない気でいることはわかったのですが、そのとき、私が言った「じゃあこれから一人でじっくり考えて、その結果をこちらから連絡するから、連絡先だけ教えて帰ってくれないか」という言葉に対して、業者がふと漏らした返事は、以下のようなものでした。

「だって、ここで私が帰ったら、あなた絶対に断るでしょ?」

これは、いい加減話の通じない相手に対して、「とにかく帰ってほしい」という私の本音を見事に言いあてていたのですが、この業者の言葉は、彼らがいかに相手からの「ファースト・コミットメント」を欲しているのかを雄弁に物語るものであると同時に、相手に冷静に考える時間を与えたくない、という本音が垣間見えるものでした。

もし、ここで私が「ファースト・コミットメント」、つまり次のアポイントメントなどの約束を了承する言葉を発していたら、その言葉自体が拘束力となり、少しずつ相手のペースに巻き込まれていた可能性が大きいと思っています。また、相手も「ファースト・コミットメント」を得たことを理由に、より突っ込んだセールスや押しかけを実行していたことでしょう。

一番最初の「コミットメント」は、「その場」では何があっても絶対に相手に与えてはいけない――それが詐欺師であれ、悪徳業者であれ、あるいは友人や知人、親族であっても、そのことだけを念頭に置くように心がけてください。それこそが、詐欺や悪徳商法から身を守る唯一の、そして究極の方法です。