お金を騙し取られない、たったひとつの心構え

「ノット・ファースト・コミットメント」を徹底して詐欺・悪徳商法被害ゼロを目指す

人間は意外と考えない生き物

たとえば、靴を履くとき、右足から履くか、左足から履くかを意識する人は、どのくらいいるでしょうか。

体を洗うとき、どの部分から洗うのかをいちいち考えている人は、どのくらいいるでしょうか。

大半の人たちは、そんなことをとくに意識して考えることはありません。考える前に、体が勝手に行動してくれています。

前回の「騙されるほうが悪いのか?」というエントリーのなかで、私は「反射作用」という言葉を使いましたが、こと人間のような複雑な生き物になると、反射作用もさまざまなバリエーションが出てきます。

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たとえば、人間の知覚には「コントラストの原理」と呼ばれる作用があります。
冷たい水とお湯、常温の水の三種類を用意し、片方の手を冷水に、もう片方の手をお湯につけた後、常温の水に両手を同時に入れると、冷水をつけた手はその水が熱いと感じ、お湯をつけた手はその水が冷たく感じられます。

同じ温度の水なのに、私たちの感覚はその前にどのような状態にあったかで、熱くも感じれば冷たくも感じてしまう。私たちの感覚というのは、以前に感じたこととの差異を実際以上に大きく感じとってしまう傾向があることがわかっています。

この「コントラストの原理」は、商売の世界ではさまざまな分野で応用されています。

これはある不動産業者から聞いた話ですが、同じような値段の物件を何件かお客に見せて回るさいに、狙い目の物件には一番最後に案内する、というのが鉄則だそうです。

つまり、あまり状態の良くない物件を、あえて最初に見せておくということです。そうすることで、最後に見せるメインの物件を、実際以上に良い物件としてお客に印象づけることができると、業者はよく心得ているのです。

お客側にすれば、「これはお買い得だ」という感覚を信じて、物件の購入を決めたと思い込んでいますが、じっさいには「コントラストの原理」によって、深く考えさせられない状態のまま、購入を決めてしまった、ということになります。

私たちは常日頃、自分の意思でものを考えていると思いがちですが、意外と反射的な作用で日常を過ごしていることが多いのです。これは、詐欺・悪徳商法の被害を未然に防ぐためにもぜひ心得ておいてほしい点です。